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お盆の名残、透かし鬼灯の静かな美しさ
お盆の間に飾っていた鬼灯を、そのまま透かし鬼灯にしてみました。鮮やかな赤い実を包んでいた袋は、時を経て繊細な網目模様となり、まるで自然が編んだレースのよう。お盆には精霊を導く灯りとして飾られる鬼灯ですが、こうして透かし鬼灯になってからも... -
木の知恵が生む丸い美しさ ― 球断器の物語 ―
本日は、和菓子の世界でもあまり目にすることのない道具をひとつ、ご紹介いたします。その名は「球断器(きゅうだんき)」。木の板に丸い溝が彫られただけの、なんとも素朴な姿ですが、実は職人にとっては欠かせない道具のひとつでございます。 団子や白玉... -
幸運を呼ぶ竹ではない竹
店内に飾ってある「ラッキーバンブー」。開店の際にいただいたものです。その名のとおり竹の仲間かと思いきや、実は竹ではなく「ドラセナ」という観葉植物でございます。アフリカのカメルーンが原産とのこと。亜熱帯の森に自生していたものが、いまやこう... -
玄関の小さな迎え花
今日は玄関に、白い薔薇をひと枝活けました。薔薇と申しますと華やかな花ですが、茶花の世界では「禁花」とされております。香りが強すぎることや、棘を持つこと、そして何よりその艶やかさが、茶室の静けさには似つかわしくないとされるのです。 茶花の心... -
—煙草盆に宿る時の香り—
赤い椿の絵柄をあしらった敷物の上に、木目の美しい煙草盆を置いています。銀の吸口が光る煙管(きせる)、ふっくらと灰をならした灰吹き、蓋付きの灰落とし――どれも今では実際に使うことはありませんが、その佇まいはまるで江戸の客間をそのまま切り取っ... -
和の心、洋の香り
むかしむかし——といっても江戸の真ん中ごろ。人々の間で、甘い餡をふっくら柔らかな餅で包んだお菓子が評判になりました。その名は「腹太餅(はらぶともち)」。お腹いっぱいになるほど餡が詰まっていることから、そう呼ばれていたそうです。やがて縁起の... -
甘い縁結び ― 盆の入りのおはぎ
今日は「盆の入り」。朝からお店の前を通るお客様の手には、菊の花やほおずき、そしてお供え用のお菓子が見えます。お盆になると、おはぎを買い求める方がぐっと増えるのは、やはり日本の習わしの力でしょうか。 お盆はご先祖様の霊を迎える大切な行事です... -
橙の灯り、精霊を導く
今日は、涼しげな灰色の小壺に、ほうずきを二房、そっと活けました。この鮮やかな橙色は、まるで小さな提灯のよう。昔から「鬼灯(ほおずき)」と呼ばれ、お盆には精霊を導く灯りに見立てられてきました。提灯に似た形と色は、帰ってくるご先祖様が迷わぬ... -
ひと椀に映す江戸の面影 — 江戸すまし —
立秋を過ぎたとはいえ、まだ昼下がりの陽射しは名残惜しげに夏の熱を残しております。 個室をご予約くださったお客様へ、ひそやかにお出しする特別なお吸い物――その名も「江戸すまし」。 江戸時代の古い料理書には、赤味噌を溶いた汁の上澄みを“すまし汁”... -
餡子暦(あんこれき)— 今日も小豆と。
朝から、工房いっぱいに小豆の甘い香りが立ちこめています。夏場は気温や湿度に気を遣いながら炊くので、まるで天気予報士のような気分です。 さて、せっかくなので、餡子にまつわる豆知識をひとつ。実は「餡(あん)」という言葉、元々は中国語で「詰め物...