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向日葵に宿る夏の名残
いただきものの花を飾りました。ひまわりが、まるで太陽をそのまま映したかのように輝いています。その隣には、小さくも愛らしいオレンジ色の花が寄り添い、緑の葉が涼やかに伸びて、夏の盛りを感じさせてくれます。 ひまわりは「太陽の花」と呼ばれるだけ... -
こだわりのおにぎりの旅
おにぎりは、日本人にとって特別な食べ物だと思います。幼いころ、お母さんが作ってくれた遠足のお弁当。仕事や勉強で忙しい日のお昼ごはん。あるいは、ほっとひと息つきたいときに、手のひらに収まる小さな幸せとして寄り添ってくれる存在です。 当店では... -
千日紅と灯りに寄せて
秋の夜は、灯りの温もりがひときわ心に沁みるもの。今朝そっと行灯のそばに飾ったのは、小さな紅の玉のように愛らしい「千日紅(せんにちこう)」でございます。 その名のとおり、千日経っても色あせぬ花。摘んで乾かしても、なお鮮やかさを残すことから、... -
菊の香と小さなお雛様
九月九日、重陽の節句。店先に、菊の花とともに小さなお雛様を飾ってみました。三月三日の雛祭りとは違い、九月九日は「菊の節句」とも呼ばれ、大人の女性のための雛祭りとも言われます。幼き日の雛祭りが、成長を祈る行事であるならば、重陽の節句はこれ... -
子どもたちの灯りとジャズの夜
今日はお店から離れて、心に残ったひとときを記してみます。先日訪れた「横浜旭ジャズまつり」。夜の会場に並んでいたのは、子どもたちが手作りしたキャンドルの灯りでした。 グラスの中で小さく揺れる炎は、ジャズの音色と寄り添うようにリズムを刻み、夜... -
─畳に映える「脚付き膳」のはなし
漆塗りの脚付き膳を畳に据え、おむすびと汁椀をのせました。お膳は小さな食卓。けれど一枚の板と四本の脚に、じつに長い時間が宿っています。 そもそも日本の食卓は、ひとり一膳が原点でした。平安の頃の「折敷(おしき)」という板が武家社会で台(うてな... -
―玄関を照らす、スパイダー咲きの菊
今週の玄関には、糸のように細い花びらを四方に伸ばした スパイダー咲きの洋菊 を一輪。淡い桃色から白へと移ろう色彩は、朝の光をすくいとるようで、通りがかった方の足取りまで軽やかにしてくれる気がいたします。 菊は古来より「不老長寿の花」とされ、... -
晩夏のひと碗、秋を待ちながら
八月の終わり、陽ざしはまだ強く、蝉の声も盛んに響いております。けれども、朝夕に吹く風の中には、ほんの少し涼しさが混じりはじめ、夏の名残と秋の予感が交わる季節となりました。 黒釉に赤の景色を宿す茶碗を前に、竹の茶杓から抹茶の緑がふわりと落ち... -
星に願う夜、旧暦の七夕
八月に入り、暦の上では秋を迎えたとはいえ、まだまだ夏の暑さは続いております。そんな中で訪れるのが「旧暦の七夕」でございます。七夕といえば七月七日と覚えている方も多いのですが、本来は旧暦で行われていた行事でありました。 旧暦の七夕は、ちょう... -
一服のあいだの絵巻物
本日はお道具の中から一碗。やわらかな土肌に、のびやかに描かれた兎と蛙。ひと筆書きのような墨の線が、生き生きと動いて見えるのです。兎はしなやかに跳び、蛙はどっこいしょと腕を振り上げて追いかける。その姿は、まるで今にも声が聞こえてきそうなほ...