野点傘に込められた雅の心

店内を彩るこの大きな赤い傘は「野点傘(のだてがさ)」と呼ばれます。もともとは野外でお茶を楽しむ「野点」の場に欠かせない道具で、日差しや雨を和らげ、ひとときの茶の世界をしつらえる役割を担ってきました。

実はこの野点傘の形が広く知られるようになったのは、1952年(昭和27年)、皇太子殿下(のちの今上上皇陛下)のご成年を祝う茶会の折。裏千家淡々斎宗匠が、晴れやかな式典にふさわしい意匠として考案されたのが始まりと伝わっています。それ以降、野点傘は茶の湯の場に限らず、料亭や旅館、祭礼など、日本の「おもてなし」の象徴として親しまれるようになりました。

赤や朱色の傘の下に座ると、光がやわらかく顔を照らし、誰もがふんわりと華やいで見えるのも魅力のひとつ。単なる日除けにとどまらず、場に彩りと格式を添える存在です。

この野点傘の下で交わすお茶や会話は、まるで雅な茶会の延長線。日常のひとときに特別な光を添えてくれるのだと、改めて感じております。

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