近ごろ「抹茶が手に入りにくい」との声をよく耳にいたします。お客様の中にも、「スーパーや専門店で見かけなくなった」とおっしゃる方が増えてまいりました。実はこれには、いくつかの理由がございます。
まず第一に、抹茶は今や世界中で大人気。健康志向の高まりから「スーパーフード」として注目され、抹茶ラテやスイーツは欧米やアジアのカフェで欠かせない存在となりました。日本国内で作られた抹茶の多くが輸出されるようになり、その分、国内で流通する量が少なくなっているのです。
さらに抹茶の製造には特別な手間と時間がかかります。茶葉は覆いをかけて日差しを遮り、旨みをじっくりと蓄えさせる「覆下栽培」で育てます。収穫された茶葉は碾茶(てんちゃ)となり、それを石臼でゆっくりと挽いてようやく抹茶となります。一時間にわずか40グラムほどしか挽けない石臼作業は、とても根気のいる仕事。機械化が進んでも、風味を守るためにはこの伝統的な方法が欠かせず、どうしても大量生産ができません。
そこへ追い打ちをかけるように、農家の高齢化や気候の影響も重なり、安定して収穫できる茶葉は年々減少気味。需要が急増する一方で、生産量が限られているため、「抹茶が手に入りにくい」という状況が生まれているのです。
けれども、ありがたいことに当店では京都・宇治の老舗「山政小山園」の抹茶を取り寄せております。由緒ある茶園から届けられるのは、格調高く深みのある味わいの「小倉山」、香り高く青々しい「さみどり」、すっきりと軽やかな「松風」、そして上品な香気が広がる「四方の薫り」。いずれも茶道のお点前にふさわしい品質でありながら、ご家庭でも気軽に楽しんでいただける逸品です。
世界で注目される抹茶を、こうしてお客様に変わらずお届けできることは、私どもにとって何よりの喜び。お団子や大福とご一緒に、あるいはおもてなしのお席に、本物の抹茶の風味をぜひ味わっていただきたいと思っております。抹茶を一服いただくひとときが、皆さまの日常に小さな安らぎと潤いを添えられますように――そんな願いを込めて、今日もお店に並べております。
