千日紅と灯りに寄せて

秋の夜は、灯りの温もりがひときわ心に沁みるもの。
今朝そっと行灯のそばに飾ったのは、小さな紅の玉のように愛らしい「千日紅(せんにちこう)」でございます。

その名のとおり、千日経っても色あせぬ花。摘んで乾かしても、なお鮮やかさを残すことから、古くより「不老長寿」の象徴とされ、また「変わらぬ愛」を表す花として人々に大切にされてまいりました。西洋でも “everlasting flower” ――永遠の花と呼ばれているのは、興味深いことでございます。

江戸の歌人・加舎白雄が詠んだ一句

千日紅 色の衰へ なき花を
  老いの命に たとへてぞ見る

小さな花が集まって、ひとつの丸い姿をつくる千日紅。その健気なあり様を、老いてなお衰えぬ心に重ねたのでしょう。俳諧の中に残されたこの一句には、変わらぬものへの憧れが込められているように思われます。

また、与謝野晶子も「色褪せぬ 花に寄すとも 千日紅」と詠み、永遠を願う想いを託しました。時代を越えて、多くの人々がこの小花に心を寄せてきたことが伝わってまいります。

灯りに照らされた千日紅を眺めていますと、私たちの暮らしの中にもまた、色あせぬものが確かにあるのだと気づかされます。家族への思い、友との絆、お客様とのご縁――それらは時を経ても変わらず、心に灯り続けるものでございましょう。

移ろう季節の中で、小さな花の姿が教えてくれる大切なこと。その一輪に、そっと心を重ねております。

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