九月九日、重陽の節句。店先に、菊の花とともに小さなお雛様を飾ってみました。三月三日の雛祭りとは違い、九月九日は「菊の節句」とも呼ばれ、大人の女性のための雛祭りとも言われます。幼き日の雛祭りが、成長を祈る行事であるならば、重陽の節句はこれからの人生を健やかに、美しく重ねてゆくことを願う日。歳を重ねることを寿ぎ、菊の花にその思いを託してきたのです。
菊には邪気を祓い、長寿をもたらす力があると信じられ、平安の昔には「菊酒」をいただき、菊の花びらを真綿に移して体をぬぐう「菊の被綿(きせわた)」の風習もありました。花の香りに包まれ、身も心も清められるような、優雅で奥ゆかしい習い事です。
こうして菊の花と小さなお雛様を並べてみますと、時を超えて受け継がれてきた人々の祈りや美意識が自然と浮かび上がってまいります。菊の清らかな香りに寄り添うように、ちいさな雛の姿もまた、静かに微笑んでいるかのよう。
厳しい夏を越え、秋の実りを迎えるこの季節。皆さまにとりましても、健やかで穏やかな日々が続きますように。
