木の知恵が生む丸い美しさ ― 球断器の物語 ―

本日は、和菓子の世界でもあまり目にすることのない道具をひとつ、ご紹介いたします。
その名は「球断器(きゅうだんき)」。木の板に丸い溝が彫られただけの、なんとも素朴な姿ですが、実は職人にとっては欠かせない道具のひとつでございます。

団子や白玉を作るとき、ひとつひとつ手で丸めておりますと、どうしても大きさや形がまちまちになりがちです。けれどもこの球断器を使えば、生地を溝に転がすだけで、同じ大きさ・同じ形の玉が、ころころと並んで出来上がるのです。まるで不思議な魔法のようですが、これは先人の知恵と工夫の賜物でございます。

そもそも団子は「月見団子」や「花見団子」など、日本人の暮らしと年中行事に寄り添ってまいりました。昔は「十五夜に十五個の団子を供える」といった風習もあり、その際に形が揃っていなければ見栄えが悪い。そんなとき、この球断器が重宝されたと伝えられています。

また、茶の湯の席で供される小餅や白玉も、大きさが揃うことで、見た目の美しさはもちろん、食感や火の通りも均一になります。和菓子職人は、口に入れた瞬間の「心地よさ」にまで心を配るのです。球断器はまさに、影の立役者といえましょう。

今では機械で大量生産も可能になりましたが、この木の道具を手にすると、木目のやさしさや手触りがなんとも温かく、こうした小さな道具ひとつに、和菓子の歴史と日本人の美意識が詰まっているのだと感じます。

さて、この球断器で作るお団子。お店ではもちろん、家庭でお月見やお祝いの席にお使いいただくのも、また風情があってよろしゅうございますね。

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