八月の終わり、陽ざしはまだ強く、蝉の声も盛んに響いております。けれども、朝夕に吹く風の中には、ほんの少し涼しさが混じりはじめ、夏の名残と秋の予感が交わる季節となりました。
黒釉に赤の景色を宿す茶碗を前に、竹の茶杓から抹茶の緑がふわりと落ちる。その鮮やかさは、濃い夏の空気に差し込む光のようで、目にしただけで心がすっと澄みわたるようです。石臼で挽かれた抹茶は粒子が細やかで、香りはやわらかく、熱を帯びた体にすっと染み入ります。
茶筅を振る音は、外の蝉時雨と呼応するかのように響き、やがて泡立つ緑が茶碗いっぱいに広がっていく。まだ夏の盛りを映す木々の葉も、日差しを受けてきらきらと光り、まるでこの一碗に季節の輝きを閉じ込めたかのようです。
一服のお茶は、暑さをしずめ、心をととのえる力を持っています。夏の余韻を楽しみながら、これから訪れる秋を思う――そのはざまのひとときこそ、何より贅沢なのかもしれません。
今日もまた、お客様のひとときがこの碗から生まれる温かな静寂とともにありますように。
